
地平線の彼方まで田畑が広がる、のどかな田園地帯に生まれる。
まだ高度成長が始まる前、時代はどこか静かな気配を残していた。
れんげ草や菜の花が満開の頃には、おやつを入れた花籠を持って、田んぼのあぜ道をひたすら歩き、
蛍が飛び交う夕べには、藁束を手に、夢中で追いかけ、
夏には、川遊びに明け暮れた。
庭先には小さな畑があり、祖母が季節毎に、さまざまな作物を育てていた。言われるままに手伝う毎日。
この頃の田舎の暮らしは、まるごと自然の中に内包されていた。
小学生の頃になると、一方では、洗練された都会の暮らしへの憧れも強くなる。
どうして、こんな田舎に生まれたのだろうと思うこともあったが、
時間が経ち場所が変わっても、ふとした瞬間思い出すのは、自然の中に浸りきっていたあの頃の湧き上がるようなだった。

