「坂の途中」の宅配サービスが描く持続可能な農業の未来。

一昨年田舎に戻り、家庭菜園を始めてみると、化学肥料と農薬にまみれた環境の中で、それらを使わず、さらに作物を得ながら土壌を自然循環の中に戻すことの大変さを身にしみて感じている。

特に、この春から複数の人達が使っている菜園の一角も借りてもいるので、慣行農法との育ちの違いに落ち込むことも多い。成長が遅く、虫の餌食になって収穫もなかなか望めそうにない。

牛糞や石灰、化学肥料などを何袋も使い、農薬を土の表面にまき、ビニールマルチをして苗を植え付けた隣の畑は、整然と一見美しく、次々に大きな収穫を得ている。

うちの畑は自然農を採用しているので、一見草だらけ。隣の畑では、先週から立派なズッキーニが次々と収穫されていくが、うちの畑のズッキーニはテントウムシダマシの集中攻撃にあい、なかなか成長ままならない。

この状況が営農であればどれだけ大変なことか、想像しただけでも胸が痛い。自然農、無化学肥料・無農薬など自然循環型の農業を目指す人達は、こんな状況を何年もかけて乗り越えている。

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坂の途中とは

「坂の途中」とは、野菜の定期宅配をメインに展開している企業。自然循環型の持続可能な農業を目指す新規就農者をパートナーにしています。

先に知ったのは「海の向こうコーヒー」で、コーヒーフェスティバルだったような。ネーミングの秀逸さと洗練されたブランディングで印象に残っていました。兄弟企業だと思っていたのですが、「坂の途中」の海外事業部になっています。

坂の途中は野菜の宅配がメインではありますが、自社農場での検証、商品開発や店舗運営、海外プロジェクトなど、若い人たちの洗練された感性で、広がりのある活動をしています。今後の展開も楽しみな応援したい集団です。

坂の途中のビジョンとミッションは?

坂の途中のビジョンは「100年先も続く、農業を。」というもの。持続可能な社会、持続可能な農業を目指しています。

そこには様々な問題が幾重にも重なり、耕作放棄地や山の保全、流通、消費者の意識など、畑だけを見ていてもどうにもならない状況があります。

環境負荷の小さな農業を広げていくこと、生き物である野菜の微妙なブレまでをも楽しむ感性、多様性を受け入れるおおらかさなど、坂の途中のミッションは、今まさに我々に必要な感性です。

100年先も続く農業=土壌の健康=人間の健康

持続可能な農業ということで言えば、そもそも「健全な土壌」とはどういうものかを理解することが必要です。

土壌内には微生物、植物の根、様々な生物が生存し、相互に関係しながら土壌の機能を維持しています。

自然農では草も表層だけ刈り取り根は残しますし、不耕起(耕さない)です。

なぜ不耕起かといえば、土壌に残された根が枯れ、微生物に分解されていくと、その部分に空気層ができ、生物の住処となります。土の中にたくさんの根が生き死にすることで生物の多様性も高くなります。

たくさんの生物が存在するということはその排出物や死骸も増えるということ。土壌中の微生物はそれらの有機物の分解や栄養素の循環を担当し、土壌生態系の健全性に重要な役割を果たしています。有機物の分解と堆積のバランスが土壌の肥沃性を高め維持するわけです。

土壌中の生物の多様性が高ければ高いほど豊かで、生態系の安定性も高まります。

健全な土壌は適切な粒子サイズと空気孔を持ち、排水性と保水性、保肥性、PHバランスなどに優れています。

すべては自然循環の中での営みです。人間が一切の手出しをしなければ当たり前に行われていること。

多くを得たい、多くの種類を得たい、効率的に得たい、きれいに整えたい・・・etc。様々な人間の欲が地球環境を追い詰めて来ました。

植物の根を一掃して生物の住処をなくし、土を耕して生物の住処を壊し、化学物質など様々なものを入れ込んで自然循環を破壊しているわけです。

地球は完璧な自然循環の中で存在し、その一角に問題が起きればその影響は全体に及びます。いま、地球は相当に危機的状況ではないか?と鈍感な我々が感じ取れる段階に入っているようです。

宅配サービスの概要

坂の途中の宅配サービスの運営方法と仕組み

坂の途中は、環境に負担をかけない農業のあり方を目指す新規就農者をパートナーとして、野菜の宅配事業を主軸に展開しています。現在300件ほどの農家と繋がっています。

化学肥料や農薬を使わず営農するということにはそれなりの覚悟が必要です。この国の農業を未来に繋いでいくには、覚悟を持って厳しい選択をして頑張っている人たちを支えるシステム。

最初の数年は収穫量も少なく不安定で、試行錯誤の繰り返しが続くはずです。そんな状況を受け入れて安定的に買い取ってくれる仕組みがなければ、続けていくこと自体が難しくなります。

自分の丹精したものを誰かが喜んでくれることが力になります。

しかし、細切れで不安定な作物を、システムに落とし込んで安定的に事業展開をするなど想像しただけでも混乱するほど。日々の細かなやり取りも多く、細切れの集荷作業も自社スタッフが担っています。

今後、独自のシステム開発が進み、全国での展開になればと期待しています。

持続可能な農業の重要性

すべては「土」が解決する

と言っても過言ではないくらいすべては土が担っています。そもそも地球の丸い形の土台は土。植物も水も大気も土の健康次第。当然人間の健康も土にかかっています。

菜園ブログで「”食糧危機や健康不安を「土が解決する」決定的理由”という記事を見つけた!」という記事をアップしているのでそちらもどうぞ。

土は神聖な領域とも言えます。

100年先も続く農業への貢献

自然循環型の農業を志す人達を、販売先の安定的な確保や、切磋琢磨する密なコミュニケーションで支援するシステムは、これからの農業をより良い形で推進する力。

密なコミュニケーションは農家の様々な創意工夫にもつながり、双方の若々しい洗練されたアイデア・創造力には楽しさが溢れています。

農業を持続可能なものにしよう!未来につながるものにしよう!という価値観が共有できてさえいれば、農家それぞれの営農スタイルを受け入れようという姿勢も好ましいもの。多様性を受け入れる懐の深さは、その事業展開の幅にも活かされているようです。

坂の途中の宅配サービスの特徴

坂の途中の野菜の販売事業には、オンラインショップ、定期宅配、実店舗などがありますが、メインの定期購入者が増えることが、量的な把握やスケジュール管理、体制の組み立ての面からも望むところでしょう。

宅配サービスの特徴やメリットについて

坂の途中の定期宅配は「旬のお野菜セット」と「きほんのお野菜セット」の2パターン。

バリエーション豊かで色々な野菜を楽しめる「旬の野菜セット」にはS/M/Lの種類があります。

使いやすい野菜が中心の「きほんのお野菜セット」は、SサイズとMサイズ

1週間に1回、もしくは2週間に1回のサイクルが選べます。

スケジュール変更、一時的中止などは自由、入会金や会員登録なども必要ありません。効率的でシンプルなスタイルです。

野菜ごとの生産者情報、保存法、食べ方などの説明書もついており、初めての野菜を前に「どうしよう」ということもありません。更に、Webサイトの中にはたくさんのレシピもあるので参考にできます。

定期宅配の野菜と一緒に、オンラインショップの米や卵、調味料、コーヒー豆等の商品も届けてもらえるので便利です。

他の類似サービスとの比較

定期宅配を使っていると、週ごとの注文品の選択に結構な時間を取られる割には、結局同じものばかりを注文しています。

その点おまかせで、定額で、定期的に届けてくれるとなれば、手間なくその時期一番美味しい野菜が届くので、食べる野菜のバリエーションも増え、食卓も豊かになるというもの。シンプルで使いやすいシステムです。

特に関西圏にお住まいの方には、健康的で新鮮な野菜が安価で届くありがたいシステムです。また、日本の将来を見据えた、志を持った若い企業を応援していくことは、未来への貢献です。

一人ひとりがそういう視点で買うものを選んでいくことが、良い商品を流通させ、良い社会を作っていく力になります。

おわりに

若い人たちが、みんなが「そんな事できないよ!」というところにあえて切り込み、丁寧に試行錯誤を繰り返しながらやり遂げていく、しかも楽しそうに。そんな姿勢をとても貴いと思っています。

小さなものを大事に拾い上げ、ブレを楽しむ感性を持ち、違いを許容する包容力を持つことこそが、誰もが幸せな社会を実現する要素となります。

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