フランスでは、保育園から大学までの学校給食だけでなく、保健施設、医療・社会施設、刑務所、官公庁などの団体食堂は、フランス人の食事に欠かせないものになっているようだ。
約8万以上の団体食堂があり、年間30億食以上の食事が提供され、毎日700万人以上の人に利用されているという。
フランスは農業生産がEU最大で、食料自給率も100%を大きく上回っている。
しかし、近隣諸国の安い農産物が入ってきて、生産コストに見合う価格が付けられず、農家が生き残っていくのに容易でないのは日本と変わらないようだ。
マクロン政権の主要政策の一つに農業者の所得向上を挙げている。
と同時に2018年にはEgalim法としてフランスの新農業・食品法が交付されている。
フランスの新農業・食品法
Egalim法の内容は、
①農業生産者と取引相手との適正な取引関係
②食品の品質・地産地消 〜 農薬使用の削減やフードロス対策も含む
③動物福祉の強化
④健康に寄与し、信頼性及び持続可能性の高い産品の促進
⑤食料分野におけるプラスティック使用の減少
②に関しては、
2022年までに団体食堂における食事の50%以上を有機農業・環境に配慮した産品などを使用し
全体の20%以上を有機農産物にする。
2021年7月からフードロス削減のためレストランは持ち帰りバックを義務化
2025年までに農薬の使用を50%削減を目標にしており、
種子処理剤ネオニコチノイドを使用禁止にし、グリホサートも使用禁止にむけて動いている。
農薬削減のための政府予算は毎年4億ユーロ、うち2億ユーロを有機農業への転換に当てている。
「食品の責務はあくまで健康に寄与することである」という理念がある。
BIO思考の土壌
ヨーロッパには、1世紀も前から化学肥料や農薬に対する警鐘が鳴らされていたという土壌がある。
20世紀初頭にはルドルフ・シュタイナーが宇宙と調和した循環型有機農法を提唱し、
イギリスのイブ・バルフォーは土壌肥沃度と人間の健康には密接な関係があるとし、
アルバート・ハワードは完全に健康な土壌が、地上の生き物の健康の基盤として、化学肥料や農薬に頼らないオーガニック農法を提唱している。
また、ドイツ人の医者兼微生物学者ハンスペーター・ルッシュはバイオロジカル有機農業を提唱している。(現在日本で実践されているところの「自然農」はこの思考がベース?と感じたのでまた調べてみたい)
勿論、それらの主張に対してキルヒマンらの批判もあった。
ヨーロッパのBIO認証マーク
1980年代にはすでにフランスではBIO認可制度が法制化され、食品だけではなく、
トイレットペーパーから石鹸・化粧品などのパーソナルケア商品にもBIO認可制度が適用されている。
・アグリカルチャー・ビオロジック Agriculture Biologique
AB認証とも呼ばれるフランス発祥のマークでフランス政府の厳しい基準をクリアしている。
栽培から商品加工まで、すべての工程での厳密なな管理と監視が行われている。
・エコセール ECO CERT
フランス農務省が設立した、有機栽培食品を認可する国際有機認定機関。
ヨーロッパを中心に世界85ヶ国以上で活動する世界最大の機関で、
オーガニック認証団体の世界基準と言われている。
・デメター demeter
ドイツで一番古い民間認証団体
有機無農薬栽培だけでなく、「バイオダイナミック有機栽培農法」を行っていることが認定条件。
また生産現場だけでなく、加工や包装、流通に至るまで細かい審査があり、世界で最も基準が厳しいオーガニック認定の一つ。
・ユーロリーフ Euro leaf
EU加盟国で生産・包装されたすべての有機食品で、ユーロリーフの基準を満たしているものにはこのロゴ表示が義務付けられている。認証機関のコード番号/原材料の栽培地記載。
非包装の食品や輸入品に関しては記載がないことも。
パリ市の学校給食
パリ市は、管轄する公立校の学校給食を、2027年より100%オーガニックにすることを決議している。
さらに、週2回のベジタリアン食、食材の50%は首都から250キロメートル以内で生産されたものに限定し、砂糖や塩分の削減も盛り込まれている。
パリでは2022年1月から、使用する食材の50%が持続可能な食品で、うち20%はオーガニックであることが義務付けられ、市が管理する1300の食堂では週1回のベジタリアン食が導入されている。
「野菜を多く食べることを生徒に教えるのは学校の役目である」と言い切る。
その上、これだけの準備をしながら、給食は義務ではないのだ。
弁当を持参してもいいし、家に帰って自宅でランチをしてもいい。
成熟した社会を感じる。